預言者
第一話 正夢
第二話 偶然
第三話 資料
第四話 ノストラダムス
最終話 世界滅亡


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「おいおい…それって冗談で言うとんか?」
「今さら冗談なんか言うとられへんやろが!」
「…」
「とりあえず、色々と調べてるから目通してみ」
「おう、さんきゅ…」
そう言い終わろうとした瞬間に手術室のランプが消えて中から先生が出てきた
亜依の母親はすぐに駆け寄った
それに続いて俺と忠次も駆け寄った
「頭を強く打ってますので意識を失っていますが後遺症が残る心配もありません。しばらく安静にしていればすぐに目を覚ますでしょう。腕の方なんですが車と衝突したさいに少し跳ね飛ばされてるんですね。飛ばされてから着地する瞬間に腕から落ちて頭を打ってるので肘の部分から手首の付け根にかけて骨折しています。」
亜依の母親はハンカチを口元に抑えて先生の説明に黙って頷いていたが腕は折れたもののの頭を打っていたが後遺症が残らないことにホッと安心していたようだ
俺と忠次はその光景を黙って眺めていた
先生が軽く頭を下げその場を後にしてからしばらくして手術室から病室へと移されるために意識を失ったままの亜依が出てきた頭には包帯が巻かれていたが顔を見て安心したのか亜依の母親は堪えきれずに涙を流した
そのとき見た亜依の顔は寝ているときと何も変わらなかった
しばらくその場で病室の準備が終わるまで待った
その間に俺は忠次に渡された資料をさらっと目を通した
「お前この後どないするんや?」
「亜依が目覚ますまでとりあえずこれ見ながら様子見る」
俺は手に持った資料を見ながら答えた
俺は資料を見ながらしばらくすると亜依を病室に移動させたナースが来た
「用意できましたので病室の方移っていただいてよろしいですよ」
愛想のある気を使ったような言い方をした
亜依の母親は頭を下げて早歩きで病室を目指した
俺と忠次もナースに頭を下げて亜依の母親の後を急いだ
部屋に入ると少し湿気のある病院の臭いとはまた違う独特な臭いがあった
亜依を取り囲んで亜依の母親と向かい合わせに俺と忠次は座った
亜依の母親は涙を堪えながら亜依の顔を優しくなでた
俺は黙って亜依の顔を見ながら亜依の手を優しく握った
その手は暖かくて静かな病室には亜依のスースーと静かな寝息だけがかすかに聞こえていた
「あの、仕事だいじょぶなんですか?」
亜依の母親は寝るとき以外は外に居て仕事をしているのを知っていたので俺は気を使って声をかけた
「もう少しだけ居るわ…ありがとね」
涙で崩れた顔で優しく微笑みながら言った
それからしばらく時計が止まったように3人共黙ったまま亜依の寝顔を眺めていた
ランランララランランラ♪
病室に飾られた時計が5時を知らせた
その音は静かで優しくとても綺麗な音色だった
亜依の母親はその音を聞いて一度時計に目をやりまた亜依の顔に視線を戻した
「はぁ…」
と深く溜め息をつき亜依の母親は亜依の顔をもう一度優しくなでた
「じゃあおばちゃんは仕事に戻るわな…あの…悪いけど亜依のことお願いな…何かあったらすぐに看護婦さんに言ってな…あの…連絡先ちゃんと看護婦さんに言っとるから…」
言葉を詰まらせながら俺と忠次の顔を見つめながら言った
「はい、だいじょぶです!」
俺と忠次は立ちあがって頭を下げた
亜依の母親も深深と頭を下げて病室をあとにした
「お前時間だいじょぶなんか?」
「あぁ、別にだいじょぶやで」
俺は黙って軽く頷いて資料をまた取り出した
今度はじっくりとその内容を読み出した
「ノストラダムスも最初はお前と同じように夢が何回か正夢になっててそれが何度もあって悩んでたらしいわ。それからちょっとたってから今度は夢で見んでも急に頭に変な映像が流れ出してそれと全く同じことが現実に起きるようになってん」
真剣に資料に目を通す俺を見て忠次が言った
俺は黙って頷いて聞いていた
忠次は続けた
「それから夢とか頭ん中に流れる映像のことを関係のある人に話したら何回もノストラダムスの予言が当たって預言者として有名になっていったんや」
「なぁ、このおっさんがノストラダムスけ?」
そう言いながら資料に載っていた一人の男の顔を忠次に見せた
「そうや。そのおっさんがノストラダムスや」
パラパラと資料をめくって最後のページに目をやった
「それが有名なノストラダムスの大予言の地球滅亡ってやつやな。いろいろテレビでやっとったやろ」
「あぁ、あんま詳しく知らんけどやっとったっぽいな」
「結局はその大予言も当たらんかったけどな」
「ふーん」
資料に目を通していると頭の中で急に映像が流れ出した
それは亜依のときと同じようで、それでもはっきりとは映し出されずに途切れ途切れにかすかに映し出されていた
それを必死に確認しようとした
それは資料に載っていた男と同じ人物が途切れ途切れに映し出されていた
そして神様のように宙に浮いていて光で包まれていた
その映像を最後に忠次の声でハッと我に返った
「お前だいじょぶか?」
「あぁ…またなんか見えた」
「どういうのや!?」
「このおっさん…このおっさんが出てきた」
「ほんで?」
「なんか亜依のときとは違って映像が途切れ途切れで見えにくかった」
「映像の内容は?」
「なんか途切れ途切れでわかりにくかったけどこのおっさんが神様みたいに光の中で宙に浮いてた。それが最後に見えただけ」
「あとは?」
「あとは途切れ途切れでわからんかった」
「んー…なんかようわからんな…」
「…」
俺はしばらく黙って資料に載っているノストラダムスを見つめたままだった
どれくらい時間が経ったのか…
とても静かで凄く落ち着くこの場所
その静寂を大音量の音色が切り裂いた
その音で現実世界に引き戻された感じでキリッと忠次を睨んだ
「すまん…」
「携帯くらい切っとけや」
忠次は申し訳なさそうに部屋を出て小声で電話をしていた
しばらくしてから部屋に戻ってくると
「親が用事あるから帰ってこいって言うとるから一旦帰るわ」
「おう。気ぃつけて帰れよ」
「終わったらじきに電話かメールするわ」
「はいはい」
「お前…」
「ん?」
「亜依ちゃんに手ぇ出すなよ…」
恥ずかしがり口をとがらせて言う忠次は子供のようだった
「はぁ?お前アホか?俺らは餓鬼の頃から一緒におるっちゅうねん。お互いなんかーいもお泊まりしてますよぉ」
俺は憎たらしそうに言ってやった
「やかましいわボケ…」
「亜依のこと気になるんやったら男としてそれなりの行動とれよ」
今度は真剣な目で忠次に言った
「おのれに言われんでもわかっとるわ!」
強がっているのが丸わかりだったが鼻で笑って最後に一言だけ忠次に言った
「気ぃつけて行けよ」
「おう!ほなまた後でな」
俺は軽く片手をあげて忠次は部屋をあとにした
それから亜依の手をまた優しく握り亜依の寝顔をずっと眺めていた
身体が疲れていたのでベッドの上に顔を置いて亜依の顔を眺めた

「今さっきの続きか…?」
俺の目に映ってるのは確かにノストラダムスだった
さっきとは違ってはっきりと映っている
ノストラダムスの周りには女が一人居る
高級そうな部屋で周りにあるものも全て高級そうな物ばかりだった
その中でノストラダムスは目を瞑り何かを考え続けてるみたいだ
女の人はそれを黙って見つめていた
ノストラダムスは目を瞑ったままうめぎ声を上げだした
それは苦しんでいるようにも見えた
女の人はそれを不安そうに見ていた
ノストラダムスの声はだんだん大きくなっていきそれは叫び声に変わった
しばらくするとその叫び声は止みノストラダムスはゆっくりと目を見開いた
ノストラダムスは女の人を見つめ何かを喋っていたが何を言っているかはわからない
女の人はそれを聞いて驚き口を手で覆っていた
ザザッ…ザザザッ…ザザザザザッ…ザーーーーーーッ…
映像はそこで途切れてしまった

俺は夢を見ていたことに気づいた
気づかない間に寝ていたのだった
「ハハハッ起きたぁ!」
その声を聞いてすぐに身体を起こした
「亜依っ!いつ起きたんや!?」
「んぅー…今さっきやで」
亜依は笑顔ですっかり元気そうな声で喋るのでホッと一安心した
「俊也来てくれたんやぁーと思って寝顔可愛かったからでこピンしたったら起きたぁ」
キャハハと笑いながら喋る亜依を見て俺も自然と笑顔がこぼれた
「お前なぁ、今はだいじょぶかもしれんけど事故あってんで!覚えてんのか?」
「うん、覚えてるよー」
当たり前のように喋る亜依を見て力がぬけてしまった
「まぁ、元気なほうがええけどな。しんどかったらちゃんと休めよ」
「はぁーい!!」
元気良く折れてないほうの手を上げた
「亜依、またな新しい映像見えてん」
「そうなん…どういうの?」
「ノストラダムス」
「忠次君も言うてたけど資料にも書いてたね」
「そうそう。まぁ別に俺らに関係ない映像っぽいからええねんけどなー」
「うん…」
「はぁ…まぁ、お前には迷惑かけてばっかでほんますまんな…」
「なんでよ!気にせんとってって言うとるやんか!」
「あぁ…あ!そうや!ええこと教えたろか?」
「なになに??」
一変して子供のような顔を見せる亜依だった
「お前のお母さん、来てくれてたで!」
「…そうなんや」
笑顔で言う俺の顔を見つめて少し寂しそうに答えた
「お前のことほんまに心配してた!話してようわかった!お母さんはお前のためにめっちゃ頑張ってくれてる!お前のことほんまに愛してくれてるわ!」
「…そうなんや」
「お前それ以外になんか言えよ!それとも俺の言うことが信じれへんか?」
「…ううん!信じれるよ!嬉しかったんよ…」
俺の手を握り締めて亜依が言った
「なんやねん!気持ち悪いな!手ぇ握んなよ」
「なに照れてんのよー!亜依が起きたとき俊也が手ぇ握ってくれとったでー」
ニッコリと微笑みながら言う亜依を見て俺は恥ずかしくなって顔を赤くさせた
今の会話がどれだけ幸せか今の俺らは考えることもしなかった

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