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小説
預言者
第一話 正夢
第二話 偶然
第三話 資料
第四話 ノストラダムス
最終話 世界滅亡


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預言者 最終話 世界滅亡 「見えます…あなたは3年以内に大金持ちと結婚することになります」
「本当ですか!?」
「ですが、あなた次第でその人は離れていくことになるでしょう」
「私…次第…」
「お金に溺れて本当に大切なものを見失ってしまわないように…頑張ってください」
「ありがとうございました!」
あれから5年
忠次はあれから俺の予言で会社を設立し今では大金持ちになっている
今でもよく連絡を取り合い亜依と3人で飲みに行ったりもする
その亜依は今では俺と一緒に暮らしている
高校を出てから離れるのを拒む亜依に対し俺は今まで迷惑をかけたこともあり亜依には特別な気持ちを抱くようになった
それからお互い付き合うようになって今では若夫婦のような生活を送っている
正樹は鑑別所から出てきてから辛い気持ちを必死に堪えて俺は話をした
俺が思っていたよりも正樹は素直に受け入れてくれて俺を安心させてくれた
高校は途中でやめてしまいヤクザに入ったらしいが今ではどうしているか全然わからなかった
そして俺はあの時夢で見たように占い師になって大儲けしていた
亜依は俺の手伝いをしてくれている
世間でも俺の名前が知れ渡りニュースにもなっている
俺は本も出版しテレビ出演も果たした
そう、全てが順調に進んでいた
今思えばあの頃悩んでいた自分がアホらしくて笑える
きっかけは亜依の一言だった
「偶然って言うてたけどさ…このまま悩むくらいやったら占い師なってまえばいいやん」
確かにその言葉にも悩んだ
でも俺には進むしかなかった
今の俺が存在することも亜依のおかげだと思っている
あの頃に比べれば予言の力も強くなっていた
見たいときに未来が見えるようにまでなり占い師としても的中率は100%だった
ところがある日
今まで通り1日に何十人、何百人という数の人を占っていた
その中の一人にこの前の占いが一つも当たらなかったという人がやってきた
俺は特に何も考えずに、ただ見えたことを言っていたので正直どうしていいかわからなかった
その日を境に日々人が減っていくようになり、苦情も増えるようになった
「なんでやろなぁ…」
「苦しむだけ苦しませて、やっと楽になれたと思ったらまた苦しませるか…」
俺はまた悩み続けた
1日にやってくる客は20人居るかどうかくらいまでに少なくなってしまった
そういう日が何日か続き、ある日…
「どういう占いを?」
「私の母の命はあとどれくらいもつのでしょうか…」
いつも通り目を瞑り深く溜め息をついた
俺はしばらく黙ったままその人を待たせて亜依のもとへと走った
「おぃ、店閉めろ」
「なんで?体調悪い?」
「見えへんねん」
「え?」
「未来が見えへんねん」
俺は冷たくそう言った
亜依は黙ったまま店を閉めてお客さんにもお金を返して体調不良だと理由をつけて
亜依は俺の手を握って黙ったままだった
俺も黙ったままボーっとしていた
何も考えることができなかった
昔なら考えて悩んでいたはずだが
もう考えることすらできなくなっていた
その日からしばらく店を閉めていた
それから本当の地獄の日々が始まった
マスコミやニュースが黙っているわけもなく店にまでよく来るようになり朝から晩までゆっくりすることもできなかった
新聞を見ることも俺にダメージを与えた
一面に俺の記事が載っていることもあった
俺だけじゃない、亜依自身にもダメージを与えていた
亜依の表情は疲れに満ちていた
その顔を見ることでまた俺も辛くなっていた
亜依にはただすまないという気持ちしか抱くことができなかった
それから3ヶ月後
もう既に世間には俺の存在はなかった
そんな中である夢を見た
それは亜依が事故で腕を折ったときに見たものだった
ノストラダムスが神様のように光に包まれていた
ノストラダムスは俺にこう言った
「私の生まれ変わりであり私自身でもある者よ。お前は私になれるか?私を越えることができるか?もう一度だけ力を…お前に未来を伝えることができるか。お前に未来を変えることができるか。救えるのはお前だけだ」
俺には何のことかわからなかった
わかるはずがなかった
それでも俺は昔に比べれば前向きに考えられるようになった
俺はその夢のことを亜依にだけ伝えた
亜依は素直に喜び俺に抱きついた
俺も素直に亜依を抱きしめた
そう、この時俺達二人には運命の二人だということはわかるはずもなかった
その日から少しずつ力が戻ってきた
店も毎日開け、最初は少なかった人も前と同じように来るようになった
ニュースやマスコミもまた騒ぐようになり苦しかったときの本をまた出版した
それからまた幸せな日々が続いた
約1年がたって落ち着いた頃にまた事件は起きた
頭の中で急に映像が流れた
それはあの時のノストラダムスだった
「ただ無心に…ただ無心に見透かすのだ…お前が見たあの時の光景…お前の力を見せるときだ…」
そのときに一瞬流れた映像
昔にも見た映像だった
綺麗で高級な部屋で女の人が見守る中ノストラダムスが予言していた
すぐに亜依のところへ行くとすぐに店を閉めた
大金持ちの俺の家にはあの時見た映像以上の綺麗さと高級さを出していた
その部屋で亜依と二人で映像通りに用意をした
俺は目を瞑るとただ無心に未来を見透かそうとした
ところが何も見えることがなかった
それでもただ無心に未来を見透かそうとした
しばらくすると途切れ途切れではあるが映像が流れだした
その映像をより綺麗により鮮明に見透かすために力んだ
それを黙って見つめる亜依の表情は不安一色だった
俺は全てを見た後亜依を静かに見つめた
亜依は不安そうな顔で俺のもとへと駆け寄った
「だいじょぶ…?」
「見えた」
「なにが?」
「亜依…地球は滅亡する」
それを聞いて亜依は両手で口を覆った
それは俺が映像で見た女性と全く同じ素振りをしていた
「6月6日、21時ちょうどに隕石が落ちる」
「今日は5月6日…ちょうど1ヶ月…」
「すぐに会見開こう」
それから会見が開かれることになり俺は見たままを伝えた
それをマスコミやニュースは日本中に伝えた
それは日本にとどまることはなく外国にまで伝われた
その報道を聞いて世界で問題になった
どうせ何も起こらないとノストラダムスに憧れてる馬鹿だと批判も多かった
1ヶ月後、結局地球人類は地球に居残ったままその時を待った
午後20時
ほとんどのテレビでは地球滅亡で騒がれていた
20時30分…
20時59分…
時は一刻と迫る中結局何も起こらなかった
俺はまた全てを失い地獄への日々が続いた
それから20年…
俺は売れない占い師として未だに店を構えていた
亜依は変わらずに俺を愛してくれていた
「あの日からあと3日でちょうど20年か…」
「お前には辛い思いさせてばっかりやったな…ほんまにすまん…」
「なによー、これからもやろ?」
亜依は笑いながら言った
ただ俺を愛し、信じてくれる亜依が居るだけで俺は幸せだった
コーヒーを飲みながら二人話していると臨時ニュースが入った
それは3日後に地球に隕石が追突するというものだった
それを聞いた俺達二人は驚きを隠せなかった
それから世間では俺の言っていることは間違ってはいなかった
6月6日に隕石は落ちるんだと騒いでいた
3日間の間、世界中で犯罪は起きてそれを取り締まる警察までもが仕事を放棄していた
その最悪な世界の中でその日は…その時はやってきた
6月6日
俺達はいつも通り二人で一緒に手を繋いで景色のよく見える山まで歩いた
30代後半…それでも昔と変わらずに仲のいい夫婦だった
山に着くとベンチに座り空を眺めたり景色を眺めたりした
「亜依…今日は此処で1日凄そか」
「そうやね」
これから死んでしまうという事実があるのに俺達二人は笑顔で普通に会話をしていた
今までの思い出を二人で語りながら
時には涙を流し時には大声で笑った
だんだんと日が沈み空は暗闇に覆われた
午後20時
空に目で確認できるくらいの赤く輝いたものが見えた
俺達は確信して黙って抱きしめあった
「亜依…ほんまにごめんな…」
俺は急に寂しくなった
今までいつでも支えてくれた亜依との別れ
耐えきれなかった
「もう泣きなや…あんたらしくないな…」
亜依も涙を耐えきれなかった
だんだん暑くなってきて20時50分
それは目の前に広がりでかいスクリーンのようだった
突然頭に映像が流れた
「お前には未来を変えることはできなかったな。もしお前の生まれ変わりでありお前自身でもある者が現れたときは私と同じ立場になるだろう。伝えていけ。いつか未来を変えることができる者が現れるまで」
そこで映像はプツンッと途切れた
俺は苦笑いを浮かべて亜依を強く抱きしめて最後にキスをした

−終−

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