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プライバシー・ポリシー

預言者 第一話 正夢 作:Prophet

「朝から最悪な夢やな、しかも人気グラビアアイドルのMASAKOが死ぬとか最悪すぎやろ」
「ほんまなー、朝からダルすぎやって」
「てか今日学校終わったらゲーセンいこや」
「あぁ、別にええで」
「俺今日ちょっと用事あるで終わったらここで待っててや」
「用ってなんやねん?」
「まぁ、また帰りに教えたるがな」
「はいはい」
高校に入って留年していた正樹(まさき)とは最初はメンチを切ったとかで因縁をつけられ仲が悪かったのだが気づけば今では親友になっていた
学校が終わり朝の待ち合わせ場所へ行った
10分ほどすると後ろから声が聞こえた
「俊也〜(としや)すまんすまん、待たせたか?」
「いや、だいじょぶや。えらい早かったのー」
「おう。俺とタメのやつにナイフ売ってもらっとってん」
「なんや?ついにおまわりさんにお世話になることを決意したか」
「任せとけや」
「ほんで、結局何に使うねん」
「いや、別に何にも使うつもりはないねんけどな。何かカッコエエやん」
「お前それなんぼでこうてん?」
「二万円!」
「お前ほんまアホやろ。いやそこまでのアホは尊敬しますわ」
「任せとけや」
いつも通りくだらない話しをしながらゲーセンへと向かった

ゲーセンにつき店の中を見渡すといつも通り幸太(こうた)が来ていた
「おう、来とったんかぃ」
「いや、今来たばっかや」
「ほんまか。あぁ、そや。MASAKO死んだらしいな」
「は?どのまさこや」
「グラビアのMASAKOやん」
「嘘やん!?ほんまに言いよん?」
「ほんまやし。お前知らんかったんかぃ」
「それいつの話しよ」
「今日の11時過ぎらしいで」
「昼に!?なんで?」
「なんか自殺したらしいで」
「嘘やん!?正樹〜!」
「んぉ?」
「お前MASAKO死んだらしいで」
「嘘やん!?ほんまに?」
「ほんまやって!」
「めっちゃ最悪な正夢やん!」
「ほんまそれな…MASAKOファンに言うたら殺されるな」
「お前も死んどけ。MASAKOファンほど多くはないけど数少ない友達の俺らがちゃんと泣いたる」
「全然嬉しないわ」
笑いながら話しをしてその場は終わった
家に帰ってからテレビをつけるとすでにニュースで何度も繰り返されていた
「ほんま最悪な正夢や…」
その日は何も気にせずに寝た
その日の夜中急に目が覚めた
「二日連続最悪な夢て…なんでやろ」
母親に起こされ学校に行く途中、正樹との待ち合わせ場所に向かった
「おはようさん」
「おうっ」
「今日はお前の夢見たわ」
「ハハハ、どんな?」
「お前がポリにパクられる夢や」
「またタチの悪い夢見てくれてんな」
いつも通りその日も笑いながら学校へと向かった
何事もなく過ぎていくはずだった日の4時間目の途中
隣のクラスから女の子の叫び声が聞こえた
授業が中断され先生が隣クラスへと急いだ
しばらくすると正樹の声が聞こえてきた
「離さんかぃボケッ!」
すぐに隣のクラスに駆け込んだ
そこには学年主任の中尾が横腹から血を流して倒れていた
少し離れたところに数人の先生に抑えつけられている正樹がいた
その近くには昨日正樹が持っていたナイフが落ちていた
その場でしばらく動けずにいた
周りには他のクラスからも集まった生徒がいた
「教室に戻りなさいっ!」
幾人かの先生が生徒を教室に戻そうとしていた
俺も腕を引っ張られ連れ戻されようとしていた
「離せやボケッ!」
その声に正樹が俺の存在に気づいた
正樹は黙ったまま俺を見つめていた
しばらくするとパトカーの音がした
正樹を見つめながら何故か俺が焦っていた
それでも何故か動けずにいた
パトカーの音が鳴り止んでからすぐに警察官が先生と一緒に走ってきた
警察官の姿を見て正樹は興奮して更に抵抗をした
「離せやあぁっ!!」
警察官2人が正樹を連れて行こうとした
「おぃ…待てやっ!!」
追いかけようとした俺の声を聞いて先生達がすぐに止めに来た
「正樹ぃっ!!」
正樹は振りかえることはなく警察官に連れていかれた
正樹が連れて行かれた後も俺は興奮が収まらず先生に抑え付けられていた
先生に説得されながら少しずつ落ち着いていった
気がつくと教室の中には警察官と数人の生徒と先生がいて
俺の周りをたくさんの生徒が囲んでいた
「おのれら何見とんじゃボケッ!!連れがポリにパクられてんの見とって楽しいんかぃコラッ!!」
「俊也、ちょっと落ち着いて!」
人ごみの中から一人の女の子が出てきた
同じクラスの亜依だった
「おのれが一番よう知ってんちゃうんかっ!!正樹がパクられてんぞっ!!」
「わかってるよっ!あんたが一番正樹と仲いいのもわかってるよ!今はちょっと落ち着きぃよ!先生も俊也離しぃや!」
亜依の言葉を聞いてもなかなか先生は離さなかった
「離せ言うとんがわからんのかボケよっ!」
先生を振りきって立ちあがった
「お前ちょっと落ち着け!」
俺の体を抑え付けようとしながら一人の先生が言った
「おのれに言われんでも落ち着いとるわぃ!触んなボケッ!」
先生は周りの生徒を教室に戻るように伝えた
亜依が俺の腕を掴んで歩き出した
「なんやねんっ!もううっとうしいの!」
「もうええからついてきぃや!!」
亜依が強引に俺の腕を引っ張りながら言った
亜依に連れられるまま荷物も置きっぱなしで学校を出た
学校を出るまでにもパトカーが何台も止まっていて警察官も数人中に入って行っていた
「どこ行くねん」
「そこの公園」
「何しにやねん」
「話すんやんか!」
「何をやねんて!」
「もうええから落ち着きって!」
亜依に連れられ公園のベンチに座った
頭の中には朝まで笑って話していた正樹の顔と声
そして昨日見た夢を思い出していた
「気持ちはわかるけどちょっと落ち着いて!」
俺の肩に手を置いて亜依が必死に言った
「ちゃうねん…」
「何が?どうしたん?」
「はぁ…昨日も一昨日も夢見てん…一昨日MASAKO死んだやろ」
「グラビアのやろ?うん、知ってんで」
「MASAKOが死ぬ夢見てん」
「あぁ…で、昨日見た夢って?」
「正樹がパクられる夢や。全く同じやねん。正樹が先公に抑え付けられてるとこもポリに連れていかれるとこも全部夢で見たのと同じやねん」
「それって正夢になってるってこと?」
「そうや…しかも全く夢と同じ。夢で見たものをそのまま見てんねん…」
「そら余計に興奮するわな…」
「一昨日の夢のことも正樹に言うてん…それが正夢になったってことも昨日は笑ってすんでん。今日の朝も昨日見た夢のことも笑って話しとってん…」
「2回も正夢になって、しかも夢で見たものと全く同じのを見てるんか…」
「…」
俺は何故か罪悪感でいっぱいになっていた
「はぁ…もう俺どないしたらええんかわからん…」
「ん〜…俊也はなんも悪くないんやから…先公がまたうるさいからとりあえず一回学校もどろ?」
「…」
「な?はぃ、いこ」
亜依はまた俺の腕を掴んで学校まで戻った
学校に戻ると学年集会が始まっていた
俺らは数人の先生にどこにいたのか何をしてたのかいろいろと聞かれた
亜依がうまく言ってその場はなんとかしのいだ
俺は保健室に行って少し休んだ
学年集会が終わり亜依が俺を迎えに来た
その日は早退し、亜依が一緒に帰ってくれた
「迷惑かけてすまんな…」
「なんでよ。気にせんでや」
亜依が笑いながら言った
「寄って行くか?」
「ううん。今日はゆっくり休んでや」
「そうか。ありがとう」
「いいえぇ、無理せんときやぁ」
「おう。また明日な」
「うん。ばいばぁぃ」
家に帰った後も正樹のことで頭がいっぱいだった
自分の見た夢のせいで正樹が警察に捕まってしまったのではないだろうか
そう思って自分を責め続けた
何時間もベッドの上でボーっとしている
また夢を見ることが怖くなってきて寝ないように必死になっていた
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