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小説

最低な生き方マニュアル(愛花編)
第一話 孝夫と虐待
第二話 自傷行為と拳創
第三話 裏切りと真美との出会い
第四話 腐ってる人間
第五話 かすみと薬
第六話 勇進との出会い
第七話 本当の愛
第八話 報告
最終話 また会える日まで

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預言者 第一話 正夢 しばらく愛花はボーっとしていた
勇進も黙って愛花を抱きしめていた
「ねぇ…頑張るって何を頑張るの…」
涙は止まっていたが鼻声だった
「今までいっぱい辛いこと経験したと思う。やけどなこれからは俺とかかすみちゃんがおるから!なんかあったら俺が守ったる」
「何のために生きればいいの」
愛花の目は冷たかった
「それは愛花次第や。愛花らしくあることが大切。好きに生きればいい。愛花は愛花なんやから」
暖かい言葉の中に冷たさを感じた
それは勇進の目だった
愛花と同じように冷たい目は変わらなかった
勇進は黙ったままかすみの様子を見に行った
「かすみちゃん、だいじょぶか?」
かすみが手で顔を覆ったまま出てきた
「あの子は何も悪くないのよ…あの子が悪いんじゃないの…」
「わかってるよ」
勇進はかすみを抱きしめて一言だけ返した
その日は愛花の家にかすみも勇進も泊まった
次の日の昼かすみが勇進を起こした
愛花は昨日の夜なかなか寝れなかったようでまだ寝ていた
勇進は黙ったまま愛花の家を出た
駅のホームでかすみが見送りに来てくれた
「なんかあったらまた連絡してきてや」
「うん、ありがとね。あの子も何か変わるはずだから」
勇進は黙ってうなずいた
「またついたら連絡するわ」
「わかった。じゃあ気をつけてね」
勇進は黙ってうなずき手を振った
電車が出た後かすみは愛花の家に戻った
愛花はすでに起きていた
「あの子は…?」
「今さっき帰ったよ」
「何で帰ったの…?」
「電車だよ。なんで言わなかったの?」
「…なにが…」
「起きてたんでしょ?」
「知ってたのに何でその場で言わなかったの」
「さぁ…なんでだろ…」
かすみが笑いながら答えた
「痛かったでしょ…」
愛花の前髪を上げながらかすみが言った
「まだ腫れてるね…冷しとこうか」
かすみが手当てをしてくれてる間も愛花はいろいろと考えていた
「ねぇ…本当の愛ってどういうの…?」
「さぁ…ずっと傍にいてくれるのが愛なのか…何でも買ってくれるのが愛なのか…セックスするのが愛なのか…わかんないね」
しばらくしてかすみが部屋を少し片付けて帰った
かすみが帰った後しばらくしてから勇進にメールを送った
「本当の愛ってどういうもの?」
しばらくすると携帯が鳴った
「答えは無い。愛花が愛だと思えば愛になる。」
「なんで殴った後抱きしめたの?」
「愛花の昔のこととかを知っとったから。傷つけて終わりにはせーへん。ただ俺はわかってほしかっただけや」
「愛花のこと考えてくれたの?」
「まぁ、そういうことやな」
「ねぇ、付き合って」
「距離あるけどそれでもええんか?」
「また会えるでしょ?」
「会えるな。まぁ会えへんくても連絡は取れるしな。愛花がええんやったら付き合おか」
「改めてよろしくね」

それから愛花は新しい仕事を探した
かすみに紹介してもらってちゃんと面接にも行き仕事にも出た
人間関係は相変わらずうまくできずにすぐに仕事をやめてしまった
愛花の状況は常にかすみが勇進に教えていた
「また仕事をやめた」
「ハハハ、またか」
かすみは悩んでいた
仕事が続かない愛花に新しいキャバクラを紹介しようかと
「勇進、愛花に新しい店を紹介しようと思うんだけどどう思う?」
「店ってキャバクラか?愛花はどう言うとるん?」
「愛花にはまだ言ってないよ」
「愛花がやりたいって言うなら紹介したって」

「愛花、勇進に聞いてみたんだけど、あんたに新しい店紹介しようと思ったんだけどさ。勇進はあんたがやりたいって言うならやってもいいって言ってるけどどうする?」
「…やる」
その日からまた愛花の中で何かが変わった
店で働くようになっても愛花は昔と同じように愛想のないキャバ嬢だった
愛花は仕事の途中でよく勇進にメールを送った
「寂しいよ…勇進…」
「俺も同じ気持ちや。離れてるけど気持ちはいつも傍におるから」
「早く会いたいよ…」
「ごめん、明日学校やし行かんかったら親うるさいからもう寝るわ。愛花、大好きやで。おやすみ」
「わかった…勇進、大好きだよ…おやすみ…」

数日後
「勇進、愛花が浮気してる」
「ふーん。そっち行くわ」
「今から!?」
「当たり前やん」
「どうやって!?」
「家出して金パクって行くわ」
「気をつけてきてね…」

次の日の朝
「かすみちゃん、迎えに来て」
「すぐ行くわ」
「愛花はたぶん家にいると思うわ」
「ほな行こか」
ピンポーン
「寝てんのか?」
「そうみたい。合鍵あるからだいじょぶよ」
ガチャッ
「愛花、起きて。勇進が来てる」
愛花はすぐに目を覚ました
「久しぶりやな。何で来たかわかるか?」
「会いに来てくれたの?」
「浮気しとるらしいやん」
「…」
「なめとんか?」
「だって愛花のことほったらかしにしてんじゃん!」
「俺がいつほったらかしにした?」
「寂しいときにメールしてもすぐに寝るじゃん!」
「それは仕方ないやろ!なんやかんや言うても俺はまだ中坊やぞ!お前の相手ばっかできひんやろ」
「愛花は寂しいの!」
「俺も同じじゃボケ!ほんなら寂しいから言うて男作ってええんかぇ?俺が同じように寂しいからって新しい女作ったらどう思うねん!」
「作りたかったら作ればいいじゃん!」
パシッ
愛花は頬を抑えて勇進を見た
勇進の目は前とは違って暖かい目だった
愛花は泣きたくないのに涙が出た
何故か懐かしい感じがして悔しかった
涙を止めようとすると更に涙は溢れ出た
勇進が愛花を抱きしめた
「お前のこと愛してる…俺もお前と同じ気持ちなんや…なんでわかってくれへんねん…」
勇進の声が震えていた
愛花は声を出して泣いて勇進を抱きしめた
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