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小説

最低な生き方マニュアル(愛花編)
第一話 孝夫と虐待
第二話 自傷行為と拳創
第三話 裏切りと真美との出会い
第四話 腐ってる人間
第五話 かすみと薬
第六話 勇進との出会い
第七話 本当の愛
第八話 報告
最終話 また会える日まで

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預言者 第一話 正夢 勇進と愛花の出会いでお互いの中で何かが変わった
勇進は帰った後も昼間はメールを絶えずに送った
愛花も同じようにたくさん送った
夜も愛花はメールを送り続けた
勇進が寝て返事がなくなってもメールを送り続けた
寂しさで耐え切れない時は電話を鳴らし続けて勇進を起こした
勇進も気持ちはよくわかっていた
「もしもし…」
「勇進…寂しい…」
「あぁ、ごめんな。寝てもとったわ…今何時?」
「3時15分…」
「お前まだ起きとったんか!?いっつも俺の心配しとるけどお前自分のことも考えろよ」
「だって寂しいんだもん…」
「俺も気持ちは同じやけどなぁ…ほな30分まで話そか」
15分だけ
いつも勇進が決める時間だった
愛花の寂しさはたったの15分ではぬぐいきれるわけもなかった
でも愛花は15分たてばちゃんと電話を切った
何度も何度も大好きだと伝えて
寂しさがずっと続く日は勇進の起きるのを待っていたこともあった
勇進が心配するのはわかっていたので言わなかった
お互い気を使いながらも遠距離の中で必死に愛を伝え合った
その15分の間で愛花は昔のことを話した
勇進は涙する愛花に優しく声をかけた

ある日急に勇進からの連絡が途絶えた
携帯に連絡がつかないので家に電話してみると
電話の使いすぎで親に携帯を止められたみたいだ
家の電話も使用禁止になっているようだ
もう二度と会えなくなるわけじゃないのに愛花はとても心配でとても寂しくなった
布団を抱きしめて勇進のことを思い続けた
寂しすぎて涙が溢れた
勇進の声が頭の中で響き続けていた
愛花は勇進が学校から帰ってきて親のいない時間を見計らって家に電話をした
できるだけたくさんのことを話した
電話ができない日もあった
そういう日はかすみに電話をしてたくさん話を聞いてもらった
かすみは勇進に連絡が取れないので独断で愛花に男の子を紹介した
メル友という形で愛花には彼氏がいることをちゃんと言っておいた
愛花はそれからまた生活が変わった
夜中まで遊んでいて家に男を呼ぶようにもなった
かすみは愛花に週に2、3回電話をした
「もう少しで月が変わるね。勇進からまた連絡が来るわ」
「あぁ…うん」
「嬉しくないの?」
「嬉しいよ」
「あんた家に男呼んだりしてるでしょ。浮気させるために男紹介したんじゃないのよ」
「浮気してるって何でわかるの」
「普通家に男呼んで泊まってるってことはやってるってことでしょ。」
「別に何もしてないし」
「月変わりで勇進からきっと連絡が来るわ。ちゃんとケジメつけなさい。勇進には私があんたに男紹介したってこと言うわ」
「別に言わなくていいよ」
「なんで?」
「別に浮気してないし。寂しい気持ちが紛れてるんだからいいじゃん」
「好きにしなさい」
かすみは愛花に男を紹介したことを後悔した
勇進の存在を大切さを忘れかけている
月が変わって勇進に連絡をした
実際にあったことをそのまま話した
勇進は愛花に電話をした
愛花の電話の対応は普通だった
前、電話したときに比べると落ち着いた声で言葉も少なかった
勇進も自分のせいだと思い必死に謝った
その後にかすみから聞いたことを愛花に言った
「別に何もしてないよ。遊んだことはあるよ。寂しかったから家に泊まりに来てもらったこともあるし泊まりに行ったこともある」
それで浮気をしてないと言い張る愛花に勇進は怒ることができなかった
「これからは寂しいときがあればまた俺に電話してこい」
「わかった」
それからはメールも電話もだんだん数が少なくなった
勇進からメールを送っても返事が遅いときがあった
そのときは愛花に電話し続けた
かすみにも連絡をして愛花の状況を聞いていた
かすみは愛花とは連絡とってないのでわからないということだった
勇進はまた愛花に会いに行くことを考えていた

しばらくたったある日愛花からの連絡が途絶えた
何度メールを送っても何度電話をしても繋がらなかった
かすみに連絡をしても連絡がつかなかった
1週間が過ぎてからかすみから電話がきた
「ごめんね、勇進。私もなかなか落ち着けなくてさ…あの子に男の子紹介したの私だしさ…」
「何のこと?てか何で電話でんかったん?」
「ごめんなさい…」
かすみが泣いているのがわかった
「は?いや、何ででんかったんって聞いとんやって。別に謝れなんか言うてへんよ」
「勇進の気持ちもわかるよ!でも私自身も責任感じてるの…だから謝ってるの…」
「全然意味がわからんのやけど。責任ってなに?」
「あの子が“死んだ”のは誰も悪くない…でも…責任を感じてるの…」
「は?死んだってなに?」
「え…?愛花…のことだよ…」
「やから死んだってなんやって言うとんじゃ!」
「ねぇ、勇進…愛花のこと何も聞いてないの…?」
「何も聞いてないってどういうこと?意味わからんし」
「あの子…死んだわ」
「は?やから意味わからんって。かすみちゃん、いい加減にしてや」
「誰にも聞いてなかったのね…知らなかったのに連絡遅れちゃってごめん…」
「かすみちゃん、喧嘩売ってんの?」
「勇進…聞いて」
深く溜め息をつきかすみの声が変わった
「あのね、あの子に男紹介したって言ったよね?」
「おう」
俺は機嫌悪そうに返事をした
「その男の子と連絡ずっととってたみたいなの。月が変わる前に愛花に話したの。月が変わったら勇進から連絡来るから。紹介した子とはちゃんとケジメつけなよって。でも月が変わった後もその子と連絡続けてたみたいなの」
「ほんで?」
「それでその子に呼ばれて家に行ってたみたいなの。その子には彼女もいるの。異性の子がお互いの家で泊まったりしてたら普通はHもするよね?その子に聞いたらしてたわ」
「ふーん。んで?」
「その子の家に愛花を呼んでHして、彼女が来るから帰れって言ったらしいの。その帰り道に車の前に飛び出したみたいなの。その子が家の前で見送ってるときに目の前で飛び出したらしいわ」
「ふーん。ほんでなに?」
「そういうことよ」
「ふーん。愛花にそう言えって言われたか?」
「どういう意味?」
「俺と別れさせるために愛花にそう言えって言われたか?」
「嘘だって言いたいの?」
「そうや。違うって言い張る気か?」
「ねぇ、勇進…気持ちはわかるけど受け止めなきゃだめなの!」
「嘘つくんやったらもっとマシな嘘にせえよ」
「…じゃあどうしたら信じてくれるの?」
「かすみちゃん、素直に言いや。愛花にそう言われたんか?」
「違う。本当のことを言ったのよ」
「ふーん…しゃーないな。行ったるから待っときや」
「わかったわ。着いたら連絡して」

次の日の朝かすみに電話した
「迎えに行くわ」
15分をすぎたくらいにかすみが一人で来た
「どないして嘘やないって証明すんねん」
「寝てないのね。嘘だって信じたいけど、不安だったんでしょ」
「関係あれへんやろうが。質問に答えぇや」
「わかったわ。あの子の家に行きましょう」
かすみがタクシーを呼び黙ってタクシーに乗り込んだ
しばらくすると愛花の家についた
愛花が一人暮らししていた家から親が出てきた
「朝からすいません、線香あげさせてもらってもいいですか?」
「はい、どうぞ」
黙ってかすみの後をついていくと俺が来たときとは散らかっていた愛花の部屋が綺麗に整頓され線香の匂いでいっぱいになっていた
かすみの見つめる方向に目をやると仏壇があった
そこに写真が一つ飾ってあった
愛花の笑っている顔だった
勇進の頭の中が真っ白になった
勇進は黙ったままその場から動けなかった
かすみの体が震えていた
ハンカチを取り出し顔を抑えていた
「信じてくれた…?」
勇進を見つめながらかすみが言った
かすみが黙って勇進を抱きしめた
勇進はボーっとしたままかすみを抱きしめた

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